何だったのかしら、あれ。
あの人、よくわからない。大体、何がからまってるっていうんだろう。

部屋に戻って荷物を片付けながら、さっき言われたことの意味を考えていました。
机に置いたフォトフレームに目をやると、パパとママとまだ幼いわたしが微笑んでいます。

何かがからまってるとしても、今のわたしにはここしかないんだものね。
とにかくしばらくは、新しい生活に没頭しよう。
へたにいろいろ考えてるより生産的だよね。


業務用ファイルに目を通す内にあっという間に時間が過ぎ、窓の外が暗くなる頃にはタケシくんとスネオさんも帰ってきました。

「ただいまシズカ!」
「さっきは途中でごめんね。これお詫びに」
「おかえりなさい!ありがとう、かわいいブーケですね!」
「そろそろ向こうも準備できたみたいだ、行こう」

タケシくんがわたしの手を引き、リビングに通じるドアをスネオさんがうやうやしく開けました。

「わぁっ、すごい!」

リビングは、楽しげな雰囲気に飾り付けられていました。
大きなダイニングテーブルにはごちそうが並び、天井や壁は楽しげにデコレーションされています。
メッドさんたちがテーブルのセッティングを終えたところで、最後にキッチンから出てきたのはワンさんでした。

「きやあぁああぁゎゎ」

彼は、とても繊細な細工がほどこされたフルーツの大皿をを両手に持ちながら、いくつものグラスを載せたトレイを頭で運んでいました。
支えるのを手伝おうとしたところをスネオさんたちに止められ、息をのみながら見つめていると、ワンさんはこともなげにお皿とトレイをテーブルに置き、まじめな顔で一礼しました。

「もぉ〜ワンもはりきっちゃうからシズカちゃんびっくりしてるじゃないか」
「ワンはいろいろできるんだ!このごちそうもほとんどワンが作ったんだぞ!」
「この北京ダックや小籠包もですか!?すごい!プロの料理人さんなんですか?」

そう聞くと、ワンさんはみるみる赤面し、そわそわと落ち着きなく答えました。

「べっ別に、そんな大したモノではないです・・・」
「このフルーツも、ワンがほったんだ!」
「スイカで彫られた龍なんて、わたし初めて見ました!すごいです、感動です!」
「ワンすごいって〜すごぉ〜い」

リーニョくんとスネオさんがニヤニヤしながら、どんどん真っ赤になっていくワンさんをつついていました。
どうやら彼は、とっても照れ屋さんのようです。

「シズカ、こっち!」

タケシくんが自分の隣のイスをぽふぽふ叩きながら呼びました。

「おっし、じゃあ乾杯でもすっか!全員座ってグラス持てよー」

キッドさんの号令がかかると、ソファの方にいたドラえもんさんとノビタさんもきて、それぞれ席につきました。
その時ふと、ある物が目に止まりました。

「あの・・・イス、ひとつ余ってますよね」
「あ。忘れてた」
「そろそろ起きるんじゃない?」

なんとなくみんなが顔を見合わせた時、どこかでバァン!と大きな音がしたのです。


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