「シズカおはようー」
「はい、おはようございます。タケシくん早起きだねぇー」
「今日はホットケーキ作ってくれるってゆってたからがんばったんだぜ」
「スネオさんは?」
「まだ寝てる」

昨夜はみんなで遅くまでおしゃべりしました。
みんな普段は朝ごはんを抜いてる、休日の活動開始は大体11時くらいだという話が出たので、なんとかしようと考えたのです。
まだお買い物をしていなかったので、今ある材料ですぐに用意できるものにしました。
小麦粉と卵、牛乳、バターにハチミツ。
どら焼きがいいという声もあったけれど、さすがにあずきはありませんでした。

「タケシくんは何枚食べたい?」
「おれは超たべれるぞ!だから大っきめに作っていいかんな!」
「はいはい」
「超いっぱい食べてはやくでっかくなんだー!」

フライパンぎりぎりの特大サイズを作っていると、リーニョくんとワンさん、続いてキッドさんがやってきました。
特大サイズをタケシくんのお皿に載せると、あとは普通サイズのを3枚のフライパンで同時に焼き、次々に大皿に載せていきます。

「どんどん取っていってくださいねー」
「シズカちゃん、オレもでっかいのくれよ!あとリーニョ、そこのケチャップとマスタード取ってくれ」
「あいかわらずへんなたべかたするなー!キッドはー」
「シズカさんの料理に対するボウトクですよ」
「うまいもんをさらにうまいと思って食ってんだからいーじゃねぇか」

遠慮なく言い合いができるのも仲良しだからこそなのでしょう。
手を動かしながらも、耳に入ってくるじゃれあいには思わず笑みがこぼれます。

「・・・他の方たちは、いつも朝、遅いんですか?」
「エルマタはいつもだよね」
「昼寝も好きですし。だからあんなに無駄に育ってるんですよ」
「メッドははやいときもおそいときもあるよ!ていうよりいつねてんのかわかんない!」
「ニコフは起きたなって思うと寝てんだいつの間にか。でもまあ起きないヤツらは放っときゃいんだよ、オレたちの取り分が減っちまう」

あっという間に減っていくホットケーキの山。最後の人まで足りるかしら・・・
お掃除とお洗濯よりも、食材の買い出しが優先事項みたい。

「・・・寮長さんたちは?」
「あいつらは起きてんじゃねえかなあ、下りてこないだけで」
「朝ご飯食べてんのみたことないよ」
「いつも部屋で勉強してるんですよ、ノビタは理工学の特待生だから」

ワンさんが、まるで弁解するかのように早口で言いました。
『起きてるのに下りてこない』という言葉にちょっぴり反応したわたしに、気をつかってくれたようでした。

わたし、やっぱりあの2人には気に入られてないのかなあ。
・・・ううん、ホットケーキがあまり好きじゃないだけかもしれない(それならそうと言ってほしいけど)。
勉強してるって言うんなら、後でコーヒーでも淹れて持っていってみよう。

卵と牛乳が切れた頃にスネオさんとメッドさんが下りてきました。
小麦粉がまだ少しあったので、お2人には甘さ控えめなスコーンにしました。

「シズカちゃんてほんとなんでもトレビアンなんだね。紅茶もとってもおいしいよ」
「スネオさんたら褒めすぎですよー茶葉は元からあったものなのに」
「いやいや、いつもより香りが全然違うもの。ねぇメッド?」
「ああ。じゃんけんでタケシが負けた日のアレと同じ茶葉とは思えない」
「おれ今関係ないだろ!」

ニコフ君が半分寝てる状態でやってきた時には、もう彼1人分のスコーンしか残っていませんでした。
フライパンやボウルを洗い始めると、自分のお皿とカップを持ってきてくれたスネオさんが聞きました。

「今日のご予定は?」
「とにかくまず買い出しです!お昼ご飯も作れないですし」
「じゃあ僕お供しようかな」
「おれも行きたい!」

タケシくんに続けて、ニコフくんとキッドさんも手を挙げました。たくさん買い込むつもりだったので大助かりです。
・・・というより、だからみんな気を遣ってくれたのかも。
わたしが後片付けをする間に、彼らは出かける準備をしにそれぞれの部屋に戻っていきました。


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